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zoom RSS 「風の軌跡」 さだまさしさんの新しいアルバム

<<   作成日時 : 2015/07/12 21:42   >>

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写真家でありエッセイストでもあった故星野道夫さんが、大気は太古の昔からの無数の生き物たちが吐く息を含んでいるので、風こそは、太古からの化石だと、述べているのを思い出しました。改めてその著作を探してみると、「旅をする木」に収められた「はるかな時を超えて」と題せられた短文の中に見つけることができたのでした。その中で、「吐く息とは言葉に置きかえてもよいだろう」とも述べています。星野さんの繊細な感受性に心が洗われるような思いになったのは言うまでもありません。

さだまさしさんの新しいアルバム「風の軌跡」が発表されました。さださんのアルバムのタイトルを並べてみると、最も多いのが「夢」の文字を使ったものですが、それに次ぐのは「風」です。生き物たちの吐く息を言葉に置きかえてもよいという星野さんの言を借りるならば、言葉を大切に曲作りをしてきたさださんが「風」の文字を使ったアルバムが多いのが頷けるような気がします。

「風」を冠せられたアルバムは、遠く38年前に発表された「風見鶏」に始まって4作目となるはずです。そのアルバムには、現在に至ってもコンサートで歌い継がれている「つゆのあとさき」や「飛梅」が収められている秀作です。また、「晩鐘」のライナーノートで季節はずれの弱々しい蚊をあはれ蚊と呼ぶことを教えられました。

さて、「風の軌跡」を聴いてみました。冒頭の「ふるさとの風」は、岩手芸術復興支援フェスティバル「3.11“復幸”音楽会」の復興支援オリジナル曲として作曲したそうですが、大学生の女性の詞を彼が補作と渡辺俊幸さんの編曲によって、自然に情景が浮かんでくるような優しい曲になっています。

異彩を放っているのは、「風の宮」です。作詞:西行、補作詞:さだまさしとされたこの歌は、花、月、そして伊勢神宮を詠んだとされる三首の短歌を引用するという手法を採った荘重なものに仕上がっています。こうした日本の伝統である短歌を取り入れるのは、さださんならではのものであり、まさに真骨頂でしょう。過去には「飛梅」や「防人の歌」、「まほろば」があり、今回の西行法師の短歌の引用は「桜人」に続くものです。

この歌は歌もさることながら、ライナーノートが素晴らしいと感じました。西行法師の三首の歌の意味合いのみならず、伊勢神宮の式年遷宮のお役を賜った経験のことなど深く考えさせられました。「我々がどれほど望もうとも神は我と共に在らず、我々が何も望まずとも神は我と共に在る。」の言葉が胸に残ります。

そして、ラストの「風に立つライオン」。何度も何度も聴いているのに、その度ごとに胸に響いてくるこの曲の偉大さは何でしょう。9分を超える今回のバージョンも新鮮で、改めて勇気をいただいたような気持ちになるから不思議です。

アルバムとは直接的な関係はありませんが、立憲主義の危機を迎えている現在の状況を考えると、新たな風を起こさなければならないと思いつつも、我が身の無力さを感じています。


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