浅き川も深く渡れ~星野道夫さんの言葉

1996年8月8日、写真家星野道夫さんはカムチャッカで急逝しました。僕が彼を知るきっかけとなったのは、さだまさしさんの歌「白夜の黄昏の光」でした。以来、彼の写真集を買い漁り、写真展には欠かさず出かけ、彼の残したものに触れてきました。

写真に添えられたコメントは、深い感性から紡ぎ出された言葉ばかりで、その言葉にはいつも心が洗われる思いがします。季節の移ろい、時の流れ、生命に対する尊厳、自然への畏怖、高度に文明化された社会に身を置いて、それが当たり前になっている僕たちの心に警鐘を鳴らしてくれるようにも思います。

最近になって、未発表の写真を含めた新たな写真集「カリブー 極北の旅人」が出版され、買い求めました。と同時に「星野道夫著作集全5巻」も再度読み返し始めています。彼を知ることで、より高い見地から自分を見つめ直し、仕事の現場で自分が置かれている状況を静かに考えることができます。

タイトルの「浅き川も深く渡れ」は、12歳の星野少年が小学校の卒業文集に残した言葉です。彼の本質は、この言葉にこそあるのではないでしょうか。浅いと思われる川も用心深く渡らなければならない、つまり油断大敵・・・。そんな、単純な言葉であるはずはないと思います。
僕は、どんな小さなことでもしっかりと考えて、耳を澄まして感性に磨きをかけて、物事を深く考え自分自ら行動すべきだという意味だと考えます。彼の作品には、一貫してこうした考えが流れていると感じざるを得ません。

今、こうして彼の一連の作品に触れることができることに感謝しつつ、改めてご冥福を祈りたいと思います。合掌。